施設概要 Equipment outline
旧日本銀行函館支店
函館市北方民族資料館は、平成元年に併設館「函館市北方民族資料・石川啄木資料館」として開館し、その後石川啄木資料館が新たに「函館市文学館」としてオープンしたことにより、現在の「函館市北方民族資料館」として平成5年に再オープンしました。
当館の建物は、資料館になる前は「日本銀行函館支店」として昭和63年まで営業しておりました。これは、日本銀行函館支店としては「3代目」にあたる建物で、大正15年(1926年)に建築され、その後昭和29年に一部増改築されましたが、築90年以上を誇る建物であり、資料館となった現在でも大正・昭和の名残が随所に残っており、歴史的建造物や銀行建築に興味のある方にとっても魅力ある資料館となっております。
仕様(大正15年建築当初)等について
外観について
- ・辰野金吾とその愛弟子にあたる長野宇平次らの設計による2代目(明治44年から大正13年の13年間)の建物同様、古典様式を取り入れたデザインで日本銀行技師の平松浅一により設計された。
- ・ともに2階建ての鉄筋コンクリート造りの本館と付属家で構成。
※本館3階以上の部分と東側部分は増築部分。 - ・レンガ造り平屋建ての金庫および倉庫ならびに金庫までの渡り廊下も設置。
※金庫および渡り廊下は昭和29年の増築時に撤去(金庫室は本館地下に設置) - ・古い銀行建築の中でも珍しい、内部用焼却炉と煙突が残されている。煙突は外部からも確認できる。
(古い紙幣の焼却用?) - ・人工花崗石貼りの2階上部にコーニス(※1)を付し、ペディメント(※2)を冠した正面玄関の両側に丸柱の列柱(※3)とアーチ窓(※4)を配し、上部バルコニーに壺飾り(※5)装飾石を設けるなどの古典様式デザインであった。
※1コーニス:西洋建築の外壁頂部や屋根ひさしの下などに付される水平の細長い突出部。蛇腹。
※2ペディメント:西洋建築の切り妻屋根における妻側屋根下部と水平材に囲まれた三角形部分。
※3列柱:コロネードとも。幾本も並んだ柱。
※4アーチ窓:窓枠の上部が丸みを帯びたデザイン。
※5壺飾り:西洋建築におけるバルコニー手すり上などに設ける壺状の飾り。 - ・昭和29年の増改築時に、外壁面や窓枠などが老朽化のため一新されたことから、現在でも当初の面影を残す部分は非常に少ない。
内観について
- ・銀行時代に営業室として使っていた2階までの吹抜部には、当時からの柱を補強した上で現在も使用されている。
- ・昭和29年に新設されたエレベーターの入口部分は、当初のものと思われる石貼りの立派なデザインである。内部のかごや動力部は直近では平成28年に改修済み。
- ・1・2階の各トイレは増築部分にあたるため、その際に新設された。1階男子トイレの手洗い洗面台の陶器は、当時の東洋陶器製であり、さらに高級品専用ロゴマークが付されている。また個室のドアノブはガラス製であり、トイレのドアノブとしては非常にめずらしい仕様である。(通常は洋室のドアに使用されることが多い)
- ・2階展示室5から展示室7へと続く廊下部分は、銀行時代には一般の職員が頻繁に使用することはない、支店長とその客人のみが使用することを前提として作られた部分である。そのため重厚なドアや石が貼られたアー チ型の枠部分には高級感が漂う。
- ・展示室6と展示室7は、支店長室と支店長応接室として使われ、他の部屋よりも天井が高く開放感のある作りで装飾も施される。また腰壁部分には手焼きの高級タイル(制作者不明。池田泰山?小森忍?)が貼られており、他の部屋と比べ
て一目で特別な部屋とわかる装飾が施されている。
ただし、支店長室は増改築時に1階へ移転しており、その後この部屋は女子更衣室などとして再利用されるこ ととなる。 - ・火災時の排煙設備として、当初は窓上部に手動開閉式の排煙窓が設置されていた。その排煙窓は外部からは確認できないが、内部からはその名残が残されているのがわかる。
- ・当時は銀行だったためか、主に道路に面している窓(南・西側)にはシャッターがあったようだ。昭和29年の外装改修の時に何カ所かは潰されている。
- ただし、開閉用のレバー差し込み口は全て館内に残されており、シャッターが残されている窓に関しては現在も開閉ができるところもある。
- ・(非公開)地下にある収蔵庫として使用している部屋は元の金庫室であり、金庫室2部屋、公文保存庫1室の合計3室。
※扉は、小樽にある日本銀行小樽支店だった「金融資料館」にあるものと似た構造で製造元は株式会社熊平製作所。
館内図